【作者】石井光太
【発行日】2016年
【おすすめ度】★★☆ 面白かった。おすすめします。
【キーワード】厚木市幼児餓死白骨化事件/下田市嬰児連続殺害事件/足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件/貧困の連鎖
【NDC】367.61 児童・青少年問題
虐待死、その実態。
石井光太氏の「鬼畜の家―わが子を殺す親たち―」は、近年発生した両親による子どもの虐待事件について、報道や事件現場での取材をもとにまとめたノンフィクション作品です。
親による子どもの虐待事件は、残忍で衝撃的であるが故に、報道で大々的に取り上げられることが多いですが、その報道の中でも事件の背景や被害者の実態など、詳しい情報を得ることは難しいことが多いです。本書は、そういった情報を抜け目なく取材し、読者に提供してくれている点が、大きな魅力のひとつだと感じました。
マヒマヒさん、私も読みました。ちょうど前投稿の『テスカトリポカ』を読む前に目を通していたので、『テスカトリポカ』の虐待シーンがより生々しく感じられました。
三つの事件
本書では三つの事件について、取り上げています。
厚木市幼児餓死白骨化事件
2014年5月、神奈川県厚木市のアパートで、7年も放置されていた当時5歳の男の子の白骨化した遺体が発見された事件。母親が家出した後、父親が一人で育てようとしますが、父親には自身の生活すらままならないほど未熟で、悲劇は起きるべくして起きます。
母親の無責任さと父親の無知さに腹が立ちました。
下田市嬰児連続殺害事件
2014年10月、静岡県下田市の住宅で、乳児2人の遺体が見つかった事件。殺人と死体遺棄で母親が逮捕された。遺体を遺棄した理由を「子供を育てる手間やカネがなく、中絶する費用もなかった。」としている。
こんなこと言っては何だけど、もう生みすぎでしょう。
著者は原因として、母親の『受け身な性格』と『思考停止』を挙げています。
足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件
2013年3月、東京都足立区で両親が次男をウサギ用ケージに閉じ込めたうえで、口にタオルを巻いて窒息死させるという事件が発生した。また次女にも犬用のリードにつなぎ、「しつけ」と称して虐待していた。
著者は『貧困の連鎖』だけでは片づけられない、としていますが、やっぱりそれが大きいのではないかと思わせます。あと3つの事件共通ですが、無知というか子供を育てる資格がないというか……。
『無知の連鎖』ということですね。
事件を防ぐためには
事件の背景や被害者の実態を詳細に取材し、読者に提供すると同時に、加害者の心理状況や家族の言動、警察や裁判所の対応なども踏まえ、社会的な問題として考察している点が、本書の大きな特徴の一つです。石井光太氏が取り上げた事件は、一見して理解できない極端な殺人行為であり、その裏には多くの問題が潜んでいることが浮き彫りにされています。本書は、事件そのものだけでなく、日本社会が抱える深刻な問題にも光を当て、読者に考える機会を提供しています。
本書を読むことで、事件の背景や被害者の実態を知ることはもちろんですが、社会的な問題についても考えるきっかけになればと思います。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
にほんブログ村に参加しています。バナーをクリックしていただけると励みになります。