【作者】清水潔
【発行日】2000年(文庫版:2004年)
【おすすめ度】★★☆ 面白かった。おすすめします。
【キーワード】ストーキング/殺人事件/遺言/女性/自己防衛
【NDC】368.64 社会病理 性犯罪.わいせつ
ストーキングの恐ろしさ
この「桶川ストーカー殺人事件-遺言-」は、とても衝撃的な内容です。ストーカーに追われる女性の苦しみが、著者の取材者としての視点で描かれており、ストーキングの恐ろしさが実感できます。このような状況に陥る女性が多いことを知り、深刻な問題だと感じます。
ネタばれになるので、詳しく書きませんが、タイトルの『遺言』が非常に悲しく感じられ、想いを促されます。この本を読んで、女性の自己防衛について考えさせられたと同時に、ストーキングに対する対策や、このような事件が起こらない社会を目指すことの意義を強く感じます。実際にこの本をきっかけに、ストーカー防止法が制定されたと聞いています。私はこの本を、女性の自己防衛について考えるきっかけになると思います。
警察の不祥事
この本のもう一つの主題として、警察の不祥事があげられます。もし被害者が警察(埼玉県警上尾署)に被害届を出した時、まともに対応していれば、もう少し違った結果になっていたのでは、と憤りを感じます。
臨場感あふれる文章力
この本には、刑事の捜査や人間ドラマなどの様々な要素が含まれており、読者を物語の中に引き込んでいきます。文章の技術も高く、人間ドラマや刑事ものなどのテーマを、魅力的かつ親密な感覚で描写しています。その点でもおすすめできます。
冒頭、著者自身がマスコミの取材の弊害(いわゆるマスゴミ)について、語っています。取材者自身がかかわっている内容だけに、説得力があります。
要点
- 桶川ストーカー殺人事件は、1999年に埼玉県桶川市で発生したストーカー被害の末に、ストーカー被害者の女子高生が殺害された事件です。
- 事件の背景には、ストーカー行為が犯罪として認知されていなかった時代の社会的な問題があったとされます。被害者の周囲からは、ストーカー被害を訴える声が上がっていたが、警察や周囲の人々は取り合ってくれなかった。
- 本書では、事件の当事者や事件に関わった人々の証言を交えて、事件の背景や事件後の社会的な反応、被害者の遺族の葛藤などが描かれています。
- 事件後、ストーカー行為は犯罪として認知され、被害者保護法が改正されるなど、社会的な意識の変化が起きました。
- 本書は、事件を通じてストーカー被害の問題や被害者保護の重要性を訴えるとともに、社会的な問題や矛盾について考えるきっかけを与えてくれます。
こんな人におすすめ
- 女性の自己防衛、ストーキング対策に興味を持っている
- 刑事ものや人間ドラマに興味を持っている
清水潔氏について
1958(昭和33)年、東京都生れ。作家、ジャーナリストとして知られています。新潮社「FOCUS」編集部を経て、日本テレビ報道局記者・解説委員になる。
取材に対する姿勢が非常に厳密で、事件や事故の真相を究明するために、自ら現地に赴いて被害者や関係者への取材を繰り返し、数多くの証言を集めました。そのため、彼の著作は高い信頼性を持っており、社会派ジャーナリズムの代表的な作家の一人とされています
2014(平成26)年、『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』で新潮ドキュメント賞、日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞している。
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