非行少年の多くは、認知機能に問題を抱えている
『ケーキの切れない非行少年たち』は、児童精神科医である著者が、少年院で出会った非行少年たちを対象にした実態調査と、その結果に基づいた非行予防・改善のための提言をまとめた書籍である。
著者は、少年院に収容されている非行少年の多くは、認知機能に問題を抱えていることに着目する。具体的には、図形の把握や時間の概念、抽象的な思考など、日常生活や社会生活に必要な基本的な認知機能が低い傾向にあるという。著者は、こうした認知機能の低さが、非行の原因の一つであると指摘する。例えば、ケーキを三等分するといった簡単な作業を理解できない少年が、窃盗や暴行などの非行に走ることがある。これは、少年が「他人の気持ちや立場に立って考える」ことが難しいため、自分の欲求を満たすために他人を傷つける行為に及んでしまうと考えられる。
本書では、こうした認知機能の低さを改善するための具体的な方法も提案されている。例えば、絵や図を使って情報を視覚的に伝える、時間の概念をゲームや実践的な体験を通じて身につけさせる、抽象的な思考を鍛えるためのトレーニングを行うといった方法が挙げられる。
本書は、非行少年の背景にある認知機能の低さについて、またその改善策について、わかりやすく解説した良書である。非行少年の理解を深め、再犯防止のために何ができるのかを考えるうえで、有益な示唆を与えてくれる。
ムアムアさん、私も読みました。なかなか難しい問題ですよね。認知機能に問題がある人が、必ずしも非行に走るわけではないし、かといって、著者の実態調査や経験も事実ですからね。
著者は、現在の認知機能テストではわからない、正常と障害の間(境界知能)の場合が問題、と指摘している。
その非行行為に被害者がいた場合は、さらに難しいですよね。
少年院は懲罰施設ではなく、更生施設だから本書ではその視点での言及はなかったかな。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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