【作者】松本清張
【発行日】2009年
【おすすめ度】★★☆ 面白かった。おすすめします。
【キーワード】青酸/731部隊/登戸研究所/陸軍中野学校/GHQ
【NDC】913.6 日本文学 小説.物語 近代:明治以後
松本清張が自らの手で推理
『小説帝銀事件』は、1948年に起きた「帝銀事件」を題材にした長編小説です。
事件の概要は、1948年1月26日、帝国銀行椎名町支店に東京都の腕章をした男が現れ、GHQの命令で赤痢の予防薬を飲むよう告げると、行員らに毒物を飲ませ、現金と小切手を奪い逃走するというものです。
この事件では、画家の平沢貞通が逮捕され、死刑判決を受けましたが、その真相は未だに謎とされています。
『小説帝銀事件』は、この事件を題材に、松本清張が自らの手で推理を展開した作品です。
マヒマヒさん、私も読みました。有名な事件なので、存在は知っていたのですが、旧帝国陸軍の話まで絡んでいたとは知りませんでした。
私もそうです。昔の警察が自白重視で、それが冤罪事件を生んでいる、という背景は知っていたのですが・・・・。
単なる推理小説にとどまらない
著者は、膨大な資料を駆使して事件の真相に迫り、単なる推理小説にとどまらない、社会派ミステリーとして完成させました。
本書の最大の特徴は、事件の真相を追求するだけでなく、事件をめぐる社会的な背景にも鋭く切り込んでいることです。
著者は、事件当時の警察の捜査の在り方、政治情勢やマスコミの報道姿勢など、事件を多角的に分析することで、事件の持つ意味を浮き彫りにしています。
タイトルに『小説』とあったので、もっと物語風な著作なのかと思っていましたが、なんだかドキュメンタリーを読んでいるみたいでした。
かなり綿密に調査したのでしょう。本書では、平沢が犯人とは考えていません。
この事件に関しては、①平沢犯人説 ②元軍人犯行説(GHQは731部隊などの研究成果を接収していたので、あまり騒がれたくない)③GHQ関係者犯行説 があるそう。本書では②なのかな。個人的にも、米軍は731部隊の研究成果を欲しがっていた、という話は結構あるし、②は信ぴょう性が高いと思う。
そうですよね。③の必要性はあまりないと思うし、①は無理すじですよね。
実際に起きた事件なので不謹慎かもしれませんが、本当にミステリーとしても興味深い作品です。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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