【作者】レイ・ブラッドベリ
【発行日】2014年(新訳)(原書は1966年)
【おすすめ度】★★☆ 面白かった。おすすめします。
【キーワード】昇火士(ファイアマン)/近未来/デストピア/焚書
【NDC】英米文学 小説.物語 20世紀―
本が禁止される未来社会
この小説は、未来社会において本が禁止され、燃やされる「昇火士(ファイアマン)」の話です。主人公の昇火士モンターグは、ある日本の少女との出会いをきっかけに、本に興味を持ち、禁書の内容を知ることで、体制に疑問を持つようになります。
MahiMahiさん、私も読みました。焚書をテーマにした、近未来的デストピア小説ですが、意外と筋はシンプルで読みやすいかったですね。
私ももっとお堅い小説かと思っていました。
『華氏911』(もしくは『華氏119』)の親戚かと、勝手に思って読み始めました。なかなか大統領の話が出ないな、と戸惑った自分が恥ずかしい・・・・。
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言論の自由
この小説は、現代社会においても、言論の自由や知識の価値について考えさせられます。特に、SNSやメディアの情報操作や偏向報道が問題視されている現代において、本書に登場する「昇火士(ファイアマン)」の役割や、禁書に対する人々の反応は興味深く読めました。
現代にも通じる重要なテーマ
また、レイ・ブラッドベリの描写力が素晴らしく、暗い未来社会を緻密かつ迫真的に描き出しています。登場人物の心情描写も深く、主人公のモンターグの内面の変化が丁寧に描かれている点も素晴らしいと感じました。
圧倒的な敵、本書の場合は管理社会そのものに追いつめられる主人公。個人的にこういう展開好き。
新装版には、解説や著者のインタビューが収録されており、本書を深く理解するための情報が豊富に含まれています。また、挿絵や装丁も美しく、読みやすさと美しさを兼ね備えていると思います。
原書は1966年と決して新しい作品ではありませんが、社会派SFとして傑作であると感じました。未来社会の問題や、言論の自由や知識の価値など、現代社会においても重要なテーマを扱っており、SFファンだけでなく、幅広い読者層におすすめしたい一冊です。
最終的に●●●(ネタばれ)でチャラになるとは意外な展開。その後の世界で、頭の中にある本が役にたつことになると思われるので、意外と納得感がある。内側にいるときは圧倒的に見える敵も、実際は●●(ネタばれ)、というのは面白いモチーフかもしれない。
レイ・ブラッドベリ氏について
レイ・ブラッドベリは1920年にアメリカ合衆国イリノイ州で生まれ、2012年にカリフォルニア州で亡くなった作家・脚本家です。彼はSF・ファンタジー・ホラーなどのジャンルに属する作品を数多く発表し、その作品群は「華氏451度」「マルティアン・クロニクルズ」などの代表作を含めて高く評価されています。
ブラッドベリは、作品中にしばしば現れる不安・恐怖・不条理といったテーマを掘り下げ、人間の内面に潜む葛藤や闇を浮き彫りにすることで知られています。また、彼の作品には、科学技術の進歩がもたらす人間の生活への影響や、自由・個性・人間性といった概念に対する考察が込められていることが多く、社会的・哲学的な観点からも高く評価されています。
ブラッドベリは、その才能によって数多くの賞や栄誉を受賞しており、アメリカ合衆国議会図書館が主催する「全国図書月間(National Library Month)」の際には、「図書館において文化に貢献した人物」に贈られる最高の栄誉である「図書館功労賞(Library of Congress Living Legend)」を受賞するなど、その業績は高く評価されています。